スミレ洋裁クラブ

魔女、妖怪のドレスお仕立ていたします。

朔と新 いとうみくさんの新作

兄の朔と弟の新の兄弟が高速バスの不事故で、兄の朔が失明する。。それは、弟の新の都合でたまたま乗り合わせたバスだった。二人はあいてを思いやりながら、再び同居するのだが、前のようにはいかなかった。互いの思いやりの奥にひそんでいる感情は、ふと会話に現れ、二人ともにやるせない思いに襲われる。母親の微妙な態度にも新は、傷つく。本来ならやりきれない物語になるのだけど、決して悲そうな話になりそうだが、そうではない。書評なんてしたことがないので、あまりトンチンカンな事は書かないけど。ブラインドマラソンにトライする朔と、伴走者となる新。物語に流れる風は、二人の未来を後押しするようにゆくりと流れていく。後半に「車夫」の主人公の吉瀬走が、ブラインドマラソンに挑戦する朔の伴走者としてあらわれて、私はどっきん。走だった。マラソンランナーをあきらめた走が先輩にすすめられてブラインドマラソンの伴走者になった場面が、ここでつながった。やるなあ・・・・。また、新しい物語につながる予感がする。

                 朔と新 いとう みく(著/文) - 講談社